役割や居場所を探す旅|アートな日常
はじめまして。大分県竹田市のアートユニット・Olectronica(オレクトロニカ)の児玉順平です。相方の加藤亮と共に、アート作品制作、ギャラリー運営、アートプロジェクトの運営などに取り組んでいます。
本連載は、アートを通して日々の生活を楽しむことを目的に、日常の中のアートを紹介していくものです。なぜ私が筆を取ろうと考えたのか。今回は、その理由について説明します。
私は物心ついたころから「もの作り」が大好きで、気づいたら今の環境にいました。これは、嫌な事から逃げ回った結果でもあります。始めた当時は、はっきりした計画がなく、正解もわからない。意見も毎日変化する。あったのは、根拠のない自信と幼いプライドだけでした。
本来、生き物には、自分の居場所や、やるべきことを定める力が備わっています。生態系のニッチな需要を満たす昆虫や、自然発火して周りを焼き尽くし自分は生き残るという植物が存在します。彼らは、おのずとと今の立ち位置に落ち着いたのです。
一方、人間はどうでしょうか。かつては誰もが持っていた、身体的感覚を失った人間たち。自分の立ち位置を決めるということに、人間自身が一番手間取っているように思います。自分がそうだったように。
ここ数年でようやく、多様な生き方やあり方が徐々に浸透し始めました。ステレオタイプを疑ってかかり、自分で様々な分野を開拓できるような時代になってきたと感じます。これまでは、新卒一括採用と年功序列という構図が普通だと教え込まれてきましたから。とはいえ、まだまだ自分のしっくりくる居場所や役割を見つけられないでいる人は多いのではないでしょうか。
こうした身体性を取り戻し、感覚を研ぎ澄ます。これこそが、自分の居場所や役割を見つける、最短ルートなのだと思います。
アートに触れることは、その一助となります。とはいえ、なかなか美術館に行く暇はない。そんな方のために、本連載は日常の中のアートを紹介していくものです。アートとは、作品だけを指すのではなく、感覚や思考を表すものでもあります。日常の中から、アート的な考え方を身につけ、直感力を高めましょう。
大分県竹田市を拠点に活動する、児玉順平と 加藤亮による美術ユニット「オレクトロニカ」。アート・デザイン・空間づくりなど分野を超える活動を行う。作品を通し、日々の暮らしや地域に新たな視点を提案している。オレクトロニカ公式サイト